帝王切開手術までお世話になった点滴三種です。

この他、お腹にはカテーテルが通っていました。

入院中、弓道部OBや地元の友人がこぞって
お見舞いに行くよ！　といってくれたのですが、
のらりくらりと全部断わっていました。ごめんなさい。

本当の理由は、とても会える状態ではなかったからです。

筋肉を弛緩させる薬で心肺機能もガックリおちこみ、
しゃべるだけで呼吸困難になる始末。
目で物を追うことも難しくなっていました。
ラグが起きるんです。目で物を追うだけなのに。
まるで通信速度が遅い動画を見るよう。

カテーテルには蛋白と血がドロドロに混じった尿が
透明なバッグに流れ込んでいて、それがベッドサイドに吊るされている。

腕は何度も点滴を差し替えたせいで穴だらけ、
血管も弱ってきていて、丸ごと一本やぶけたなんてのもありました。
緑や紫の跡がべったりついて何かの中毒者のよう。
今も針跡がヤツメウナギのようにボツボツと残っています。

とてもじゃないが、会えない。見せられません。

唯一面会に来ていたカーナビ旦那や義父母、実母は、
明るく会いに来て明るく帰っていましたが、
後で聞くとあんまりな状態なので表情に出さないようにするのが
難しかったそうです。そんなに酷いありさまだったのか…

同じ安静入院でも、自由に読書して
自分でトイレに行ける人もいます。
産後は産後で、他の産婦さんはフロアで談笑しながら
お茶を飲んで、スタスタ歩いているのに、
こちらは筋肉が衰えまくって徒歩1分がつかまり歩きで15分かかる。
おむつを換えているうちに脂汗がダラダラ流れ、
立っていられなくなって、
保育器が並ぶ中へ椅子を運んでもらい座るしかなかった日も。

こうも違うのか、とやりきれない事もありましたが、
個室に移ってからはボーっと白い天井を見て過ごしました。
窓の外の小さな青空がだんだん高くなって、
蝉の代わりにコオロギの声が聞こえだして、季節を感じていました。
反対側に建つ建物の窓が一瞬だけ夕日を映して、
それが強く輝いてとてもきれいで、毎日楽しみにしていました。

寝たきりで唯一よかったのは、
まるっきり赤ちゃんと同じような体験を長く出来た事。
だからパジャマのよれがどれだけ苦しいかがわかるし、
同じ天井をずーっと眺めているのがどれだけ苦痛かが、わかる。
90°角度がかわるだけで全然違うんです。

ナギが殆ど泣かないお世話しやすい子供なのは、
死線をかいくぐった度胸があるというのもそうでしょうが、
この寝たきり体験を生かしてお世話しているから
不快が少なめだからというのも、あるのかも知れません。